千葉大学で4年間にわたりフェアトレードの普及活動に取り組んできた学生が、千葉市から表彰されたというニュースが届きました。千葉大学文学部4年の小藤那奈子さんが受賞したのは、「千葉市大学市長賞」。地域のまちづくりに貢献した大学生を称える賞で、千葉市役所で授賞式が行われました。
今回注目したいのは、表彰という結果だけではありません。小藤さんが大学生活の中で続けてきたのは、フェアトレードという社会的なテーマを、より多くの人に伝えるための活動です。子ども向けの絵本づくりやワークショップ、地域イベントへの参加など、身近なところから少しずつ広げてきた取り組みは、地域と大学をつなぐひとつの形ともいえそうです。
学生の挑戦が、やがて地域の未来につながっていく。そんなストーリーを感じさせる今回の受賞。小藤さんはどのような思いで活動を続けてきたのでしょうか。そして、その取り組みはどのように広がっていったのでしょうか。今回は、その4年間の歩みをたどりながら紹介していきます。
フェアトレードを広めたい 小藤さんの活動の原点

千葉大学文学部4年の小藤那奈子さんがフェアトレードの活動に関わるようになったきっかけは、大学入学後に参加した「環境ISO学生委員会」での経験でした。環境問題や持続可能な社会について学生主体で取り組むこの委員会では、SDGsに関わるさまざまな企画や活動が行われています。
小藤さんがフェアトレードというテーマに関心を持った背景には、高校時代の授業で学んだ経験があったといいます。発展途上国の生産者が適正な価格で取引できる仕組みを知り、「この考え方をもっと多くの人に知ってもらいたい」という思いが芽生えました。その思いを大学での活動につなげ、フェアトレードの啓発をテーマにした企画づくりに取り組むようになります。
大学1年次には、千葉市でフェアトレードを広める取り組みに関わりながら、児童向けの啓発企画の責任者を担当。さらに2年次には、環境意識の向上を目指す「千葉大学×京葉銀行ecoプロジェクト」のプロジェクトリーダーを務め、SDGsについて考えるきっかけをつくる活動にも取り組みました。
こうした活動を通じて、小藤さんは大学の中だけでなく地域とも関わりながら、社会課題について考える機会を広げていきます。学生の立場だからこそできる発想や行動が、少しずつ周囲を巻き込みながら形になっていきました。
大学生活の4年間を通して続けてきたフェアトレードの取り組みは、単なる学内活動にとどまらず、地域社会とつながる実践的な学びの場にもなっていたようです。
子どもから社会へ広げるフェアトレードの取り組み

フェアトレードという言葉は聞いたことがあっても、実際にその意味や仕組みを詳しく知っている人はまだ多くないかもしれません。小藤さんも活動を続ける中で、その認知が十分とはいえない現状を感じてきたといいます。特に、日常的に商品を購入する大人世代へ理解を広げていく難しさを実感する場面も少なくなかったそうです。
そこで小藤さんが考えたのが、「子どもをきっかけにフェアトレードを知ってもらう」というアプローチでした。子どもたちが楽しみながら学べるよう、フェアトレードをテーマにした絵本づくりやワークショップの企画を進め、学校やイベントなどでその取り組みを広げていきます。
子どもが学んだことを家庭で話すことで、自然と保護者世代にも関心が広がる。そんな流れを生み出すことができれば、社会全体の意識も少しずつ変わっていくかもしれません。難しいテーマをそのまま伝えるのではなく、身近な形にして届ける工夫は、多くの人にとって理解の入り口になりそうです。
また、小藤さんは千葉市内で開催されるフェアトレード関連のイベントにも積極的に参加し、地域の団体や行政と連携しながら活動を続けてきました。大学という学びの場から地域社会へと活動の輪を広げていくことで、フェアトレードという考え方を身近に感じてもらう機会をつくってきたのです。 こうした取り組みは、学生の発想と行動力が社会につながっていく一つの例ともいえるでしょう。フェアトレードというテーマを通して、人と人、そして地域を結びつける活動が、少しずつ広がってきました。
大学と地域がつながるフェアトレードの取り組み

今回の授賞式のあとには、千葉市の神谷俊一市長との意見交換の時間も設けられました。フェアトレードの取り組みをどのように広げていくべきか、地域全体で考える場となったようです。
神谷市長からは、フェアトレードを推進していくためには行政だけでなく地域全体で取り組んでいくことが重要だという考えが示されました。千葉市でもフェアトレードの推進に取り組んでおり、今後どのように活動を広げ、フェアトレードタウンの認定を目指していくべきかについて意見が交わされました。
これに対して小藤さんは、これまで活動を続けてきた中で感じてきた課題についても率直に語りました。フェアトレードの認知度はまだ十分とはいえず、特に購買行動を担う大人世代へ理解を広げる難しさを感じてきたといいます。
そのため、子ども向けの絵本制作などを通して、子どもから保護者へと関心が広がるような工夫を行ってきたことを紹介しました。また、千葉市がフェアトレードタウンとして認定されることは、市民の誇りにもつながり、行動を変えるきっかけになるのではないかという考えも示しました。
学生の視点から語られる率直な意見に対し、市長も市民一人ひとりの行動を変えていくことの難しさに触れながら、呼びかけるだけではなく、行動のきっかけをつくることが大切だと応じました。大学での学びや学生の活動が、地域社会の課題を考える場につながっていることを感じさせる意見交換となったようです。
4年間の取り組みが評価 千葉市大学市長賞を受賞

こうした活動が評価され、小藤さんは「令和7年度 千葉市大学市長賞」を受賞しました。授賞式は2026年3月4日、千葉市役所で行われ、神谷俊一市長から賞状が授与されました。
この賞は、千葉市のまちづくりや地域の活性化に貢献した市内の大学生や短期大学生を表彰する制度です。学生のまちづくりへの参加意欲を高めること、そして大学を通じて地域社会に貢献する人材の育成を目的として、2015年度に創設されました。授賞式は毎年3月ごろに行われ、市長との意見交換の場も設けられています。
令和7年度は、市内の大学から12名の学生が選ばれ、そのうちの一人として千葉大学から小藤さんが受賞しました。フェアトレードの普及活動やSDGsに関する啓発活動を学生主体で進め、大学や地域と連携しながら取り組みを続けてきた点が評価されたとされています。
大学生活の中で続けてきた活動が、地域社会への貢献として形になり、こうして表彰につながった今回の受賞。学生の取り組みが地域の取り組みと結びつき、社会の中で評価されていく様子は、大学での学びの可能性を感じさせてくれる出来事ともいえそうです。
学びを地域へ これからも続くフェアトレードの活動

今回の受賞について小藤さんは、大学生活の中で力を入れて取り組んできたフェアトレードの啓発活動が評価されたことを、大変光栄に感じていると語っています。大学での活動のきっかけとなったのは、2022年に所属していた環境ISO学生委員会で企画を考える機会があったことでした。高校の授業で学んだフェアトレードの考え方が印象に残っており、そのテーマをもとに啓発活動を始めたのだといいます。
子どもたちにも楽しくフェアトレードを知ってもらえるよう、絵本やワークショップを企画しながら活動を続けてきました。また、千葉市が2026年のフェアトレードタウン認定取得を目標としていることもあり、市内で行われるフェアトレードイベントにも積極的に参加してきました。
大学では社会学を専攻しており、地域というフィールドで学びを深めながら社会課題に向き合えることにやりがいを感じていたそうです。学生委員会を引退した現在も、市民団体である「千葉市フェアトレード推進グループ」の副代表として活動を続けています。
そしてこの春からは、千葉市職員として働くことが決まっています。小藤さんは、今回の受賞やフェアトレードタウン認定を「活動のゴールではない」と捉え、これからもフェアトレードの取り組みを広げていきたいと考えているそうです。大学での学びや経験を生かしながら、地域の実情に寄り添える市職員を目指したいという言葉には、これまでの活動を大切にしながら次の一歩へ進もうとする思いが感じられます。
学生の挑戦から始まったフェアトレードの取り組みは、これからも地域の中で広がっていきそうです。
国立大学法人 千葉大学 概要
千葉大学は、1949年に設立された国立大学で、千葉県千葉市に所在する総合大学です。人文・社会科学から自然科学、医療、工学まで幅広い分野の教育と研究を行っており、日本を代表する国立大学の一つとして多くの人材を社会に送り出してきました。大学の歴史は、1872年に創設された教育機関などを源流としており、複数の学校が統合される形で現在の大学が誕生しました。
現在は複数の学部・大学院を擁する総合大学として、多くの学生が学んでいます。文学部や教育学部、医学部、工学部、園芸学部など多様な分野の教育研究が行われており、学際的な学びを通じて社会課題の解決に取り組む人材の育成にも力を入れています。









