プロフェッショナル人材の総合活用支援サービス『HiPro』事業戦略発表会開催相互副業プロジェクトで新たな一歩

少子高齢化と労働人口の減少が進む日本では、人材不足の問題が深刻化しています。5月22日(水)、転職サービス「doda」などを提供するパーソルキャリア株式会社のプロフェッショナル人材の総合活用支援サービス「HiPro(ハイプロ)」は、サービス開始から2年を迎え、事業戦略発表会を開催しました。この発表会では、副業やフリーランス人材の活用が進まない現状とその解決策として、新たに「相互副業プロジェクト」が発表されました。

パーソルキャリア株式会社執行役員「HiPro」編集長兼「HiPro」事業責任者の鏑木陽二朗氏

この発表会では、プロフェッショナル人材の活用における現状と課題が詳細に分析されました。特に注目されたのは、企業が副業やフリーランス人材を積極的に活用できていない実態です。情報の取り扱いや、受け入れの管理など、活用経験がないことから生じる不安感が大きな障壁となっています。
パーソルキャリアはこれらの課題に対応するために、「相互副業プロジェクト」を立ち上げ、企業間でのスキルとリソースを共有する新しいモデルを提案しました。このプロジェクトの具体的な施策と期待される効果について、パーソルキャリア株式会社執行役員「HiPro」編集長兼「HiPro」事業責任者の鏑木陽二朗氏より詳細な説明が行われました。
「HiPro」は、副業・兼業プロ人材のスキルを活用することで、企業の経営課題を解決に導くサービスです。これまでに5千社以上の企業と取引し、2万件以上のマッチング実績を誇ります。個人の登録者数は5.7万人以上に達しており、社会的な要請がその成長を後押ししていると考えられます。

副業人材活用の実態

副業市場は、2022年に政府が副業や兼業に関するガイドラインを改定したことにより、大きな変化を遂げました。副業を解禁する企業が増加している一方で、実際に副業受け入れを認めている企業は16.4%、副業実施率は7%に留まっています。このように、需要と供給の間には大きなギャップが存在しています。

パーソルキャリアは、「HiPro」を通じて、企業と個人が相互に成長する「スキル循環社会」を目指しています。企業は正社員雇用以外の選択肢として外部のプロフェッショナル人材を柔軟に活用し、個人は自分のスタンスに合わせた働き方を選べる、このような在り方が双方にとって当たり前になる世界を実現したいと考えています。
このビジョンを実現するための具体的な施策として、「スキルリターン」プロジェクトが進行中です。「スキルリターン」プロジェクトでは、地域に特別な想いを持つプロフェッショナル人材がその経験やノウハウを地域に還元する取り組みを行っています。これにより、地域や企業の成長に繋げることを目指しています。現在、全国4箇所でリリースされ、100件を超えるマッチングと先導的事例を生み出しています。
「スキルリターン」を通じて、企業が抱える課題も明らかになりました。情報の取り扱いに関する不安や、受け入れ管理に関する不安など、プロ人材の活用経験がないことから生じる「不安の壁」があります。また、労働人口の減少による人材不足も日本経済の課題として浮き彫りになっています。

「相互副業プロジェクト」

パーソルキャリアは、企業とプロフェッショナル人材の受け入れ拡大を目指して「相互副業プロジェクト」に着手しています。このプロジェクトは、副業先企業と在籍企業が連携し、「会社公認」の副業を実現することを目指しています。2022年に発足した「キャリアオーナーシップとはたらく未来コンソーシアム」を通じて、企業間での相互副業の実証実験を行い、具体的な課題解決策を展開しています。これにより、企業の不安を解消し、副業者を受け入れる体制を整えることが目的です。
実証実験の結果、副業者を受け入れた企業の満足度が高く、今後も受け入れを継続したいという意向が示されました。このことから、企業が最初の一歩を踏み出すことで、副業者や外部人材の活用が有益な選択肢となり得る可能性が明らかになりました。 相互副業によって企業が得られるメリットとして、以下の点が挙げられます。

1.多様な人材の受け入れ
新たな視点やスキルを持つ人材を受け入れることで、組織の多様性が向上します。
2.自社社員のリスキリング
副業を通じて社員が新しいスキルを習得し、キャリアの幅を広げることができます。
3.イノベーション創発
異なるバックグラウンドを持つ人材の交流により、新たなアイデアやイノベーションが生まれやすくなります。
4.人的資本経営の実現
社員の成長を促進し、企業全体の競争力を高めることができます。

このように、パーソルキャリアは企業と個人が共に成長し、新たな働き方を推進することで、持続可能な社会の実現を目指しています。

互副業マッチングプラットフォーム

パーソルキャリアは今後、業界初の相互副業マッチングプラットフォームをリリースし、企業間での人材シェアリングを実現するツールを提供します。このプラットフォームでは、自社の副業希望者の受付、他社からの副業受け入れの募集、相互副業を実践する企業同士のクローズ環境でのマッチング、副業の活動管理、そして蓄積したデータを基にしたスキルの可視化までを一貫してサポートします。7月にはプレリリースイベントが予定されています。
さらに、相互副業プロジェクト以外にも、パーソルキャリアは外部人材や副業者の活用を促進するための取り組みを計画しています。具体的には、「スキルリターン」プロジェクトのエリア拡大や、スタートアップ向けの外部人材活用支援にも注力する予定です。
最後に、鏑木氏は「個人が持っているスキルがさまざまな企業で柔軟に生かされる社会を作りたい」と語り、「スキルの循環社会」を力強く推進していく意志を表明しました。
このように、パーソルキャリアは企業と個人が共に成長し、新たな働き方を推進することで、持続可能な社会の実現を目指しています。

相互副業実践企業とのトークセッション

左から鏑木氏、明治ホールディングス株式会社 グループ人事戦略部 人事戦略グループ グループ長 大河内淳氏、兼松株式会社 人事部 人材開発課 課長 塚本達雄氏

トークセッションでは、相互副業と外部人材活用に関する実例やメリット、今後の展望について議論されました。
まず、副業の導入に対する社内の反応について、慎重な意見もありましたが、トライアル形式で進めることで理解を得ることができました。特に、大企業が多く参加しているため、安心感を持って取り組めたという点が強調されました。
次に、副業の具体的なメリットとして、コンサルタントを依頼するほどではないが、現実的に困っているポイントに対して経験者から直接アドバイスを得られることが挙げられました。他社の失敗事例や実務経験を共有することで、実務担当者にとって非常に有益な情報が得られるという意見も出ました。
さらに、外部人材活用のメリットについても言及されました。社内の限られた部署での取り組みではあるものの、今後は全社的に展開し、社員が会社の外で経験を積むことで視野を広げ、その経験を本業に活かすことが重要だとされました。また、社内副業やグループ内での多様な経験も推進する方針が示されました。
最後に、今回のトライアルの成果として、社員が自社の取り組みの価値を再認識し、帰属意識が高まった点や、社員自身のスキルアップにつながった点が挙げられました。これらの取り組みを通じて、より多くの企業や個人が外部人材活用や副業のメリットを享受できるよう、継続的に取り組んでいく方針が示されました。

今回の事業戦略発表会を通じて、副業や外部人材活用が企業に与えるポジティブな影響が明確に示されました。トライアル形式での導入が社員に安心感を与え、他社の知見を活用することで新たなビジネスチャンスを創出する力があることがわかりました。また、社員自身のスキルアップや自社の取り組みに対する再認識など、内部的なメリットも多く見られました。これらの取り組みが、今後さらに広がり、多くの企業が外部人材の力を積極的に取り入れていくことで、日本のビジネス界全体の成長と革新を促進する一助となることを期待しています。企業と個人の成長が交差する新しい働き方の可能性が、ここに確かに存在していると感じました。