食・建築・起業を体験!子どもたちが“得意”を見つけた夏休みイベント

子どもの将来を考えるとき、「好きなことを見つけてほしい」と願う保護者は多いのではないでしょうか。一方で、自分に向いていることや得意なことは、教室で学ぶだけでは気付きにくいものです。実際に体験し、人と関わり、自分の言葉で考える経験が、新たな可能性につながることもあります。

この夏、小学4年生から高校3年生を対象に、「食」「建築」「起業」の3つの分野を体験できる3日間のイベントが行われました。子どもたちは、野菜の魅力を伝えるPOPづくりや建築模型の制作、将来の自分を考えるワークなどに挑戦し、それぞれ異なる仕事の面白さや学びに触れました。

3日間を通して目指したのは、知識を増やすことだけではなく、自分の得意なことや将来の可能性を見つけるきっかけをつくることです。今回は、子どもたちが食・建築・起業という3つの体験を通して、どのような気付きや成長を得たのかを紹介します。

「おいしい」の先にある気づき──食を通して伝える力を学ぶ

イベント初日は、「食農みらい塾」による食をテーマにしたプログラムが行われました。このイベントを開催した株式会社類設計室は、設計事業に加えて教育事業にも取り組んでいます。子どもたちが挑戦したのは、トマトの食べ比べと、その魅力を伝えるPOPづくりです。一見すると販売体験のようにも思えますが、このプログラムで大切にされていたのは、野菜を「売る」ことではなく、自分が感じたことを相手に伝える力を育むことでした。

まず子どもたちは2種類のトマトを実際に食べ比べ、味や香り、食感の違いを言葉にしていきました。「おいしい」という一言だけではなく、「やわらかい」「香りが良い」「みずみずしい」といった、それぞれが感じた特徴を自分の言葉で表現します。その体験をもとに、「汁が出にくいのでお弁当におすすめ」「太陽の光をたっぷり浴びて育ったトマト」など、生産者の思いや野菜の魅力が伝わるPOPを制作しました。どんな言葉なら相手に伝わるのかを考えながら、一人ひとりが工夫を凝らしていたそうです。

講師からは、「野菜の向こうには、生産者や運ぶ人など、多くの人が関わっている」という話も紹介されました。目の前の食材だけを見るのではなく、その背景にある人や物語に目を向けることも、この体験の大切な学びの一つです。また、「AIは文章を作ることはできても、自分が実際に食べて感じたことを書くことはできない」という言葉も伝えられ、体験したからこそ生まれる自分自身の言葉の価値について考える機会となりました。

参加した子どもたちからは、「トマトが苦手だったけれど食べられるようになった」「食べ物にたくさんの人が関わっていることを知った」といった声も寄せられました。味の違いを知るだけではなく、食べ物の背景や伝え方まで考えたこの体験は、普段の食事を見る目も少し変えてくれる時間になったのではないでしょうか。

アイデアを形にする面白さ──建築を通して学んだ「協力する力」

2日目は、「こども建築塾」で建築の仕事を体験するプログラムが行われました。子どもたちが取り組んだのは、チームで協力しながら一つの建築模型を完成させることです。ただ模型を作るだけではなく、「誰のために、どんな建物をつくるのか」を考えながら進める内容となっており、建築の仕事に欠かせない発想やチームワークを学ぶ機会となりました。

子どもたちは、ランダムに配られた建物の依頼主のプロフィールカードをもとに、その人がどのような建物を求めているのかを話し合いました。「このアイデアを組み合わせてみよう」「土台を作るから壁をお願い」といった声を掛け合いながら、それぞれが役割を分担し、一つの作品を完成させていきます。一人で考えるのではなく、お互いの意見を取り入れながら形にしていく過程そのものが、このプログラムの大きな特徴でした。

発表では、「仕事に夢中になりすぎる依頼主が気分転換できるよう、廊下をアスレチックにした」など、依頼主の気持ちに寄り添ったユニークなアイデアが次々と紹介されました。模型の完成度だけではなく、「相手が本当に喜ぶ建物とは何か」を考えた工夫が、それぞれの作品に表れていたそうです。

プログラムの中では、一級建築士の講師から「建築士の仕事は建物を設計することではなく、依頼主の期待や思いを形にする仕事」という考え方も紹介されました。また、建築は一人で完成させるものではなく、多くの人と協力しながら新しいものを生み出していく仕事であることも伝えられました。模型づくりを通して、子どもたちはものづくりの楽しさだけでなく、相手を思いやる視点や、仲間と力を合わせて一つの目標を目指す大切さにも触れた一日となりました。

「将来が楽しみ」と思えるきっかけに──起業体験で未来を描く

イベント最終日は、「こども起業塾」のプログラムが行われました。この日のテーマは、起業そのものを学ぶことではなく、自分の将来について考え、誰かの困りごとを解決する発想に触れることです。子どもたちはワークショップを通して、自分自身の未来と向き合いながら、新しいアイデアを形にする楽しさを体験しました。

最初に取り組んだのは、「25歳の自分」を思い描くワークです。大谷翔平選手も活用したことで知られる「マンダラチャート」を使い、将来どのような自分になっていたいかを書き出していきました。はじめは「将来のことは分からない」と悩む様子も見られましたが、講師が自身の経験を交えながら、「その時々で目の前のことに全力で取り組むことが、今の仕事につながっている」と語りかけると、子どもたちは少しずつ未来をイメージし始めました。

続いて行われたのは、お客さん役のスタッフが抱える悩みを解決するアイデアを考えるグループワークです。「時間がなくて運動できない」という悩みに対し、「運動するとポイントが貯まり、好きなグッズがもらえるアプリ」といった自由な発想が次々と生まれました。正解を探すのではなく、「相手が喜ぶにはどうしたらよいか」を考え、自分たちのアイデアを形にしていくことが、このプログラムの大きな目的です。

ワークを終えた後、子どもたちは改めて「25歳の自分」と向き合いました。「家族を大切にしたい」「鉄道が好きだから、一緒に学んだ仲間と鉄道会社をつくりたい」など、自分らしい将来像を具体的に書けるようになったそうです。参加者からは、「将来に期待が持てるようになった」「書いたことを25歳のときに実現したい」といった感想も寄せられました。未来はあらかじめ決まっているものではなく、自分で考え、一歩ずつ経験を積み重ねていくことで形になっていく――そんな前向きな気づきを得られる一日となりました。

3日間の体験が子どもたちの未来への一歩に

3日間のプログラムを終えた後に行われたアンケートでは、イベントの満足度は約100%という結果となりました。さらに、参加した子どもたちの91%が「将来やりたいことが見つかった」「働くことへのイメージがプラスになった」と回答しています。食・建築・起業という異なる分野を体験しながら、自分自身の興味や可能性と向き合った時間が、将来を前向きに考えるきっかけにつながったことがうかがえます。

今回のイベントは、一度きりの特別な企画ではありません。「こども建築塾」「こども起業塾」「食農みらい塾」は、それぞれ継続して取り組まれている教育プログラムです。建築や起業の分野では、第一線で活躍するプロから直接学べる機会を設けるなど、実際の仕事に触れながら学べる内容が特徴となっています。また、「食農みらい塾」では、食や農業を身近に感じられる体験を通して、社会とのつながりを学ぶ機会が用意されています。

これまでの実績も豊富です。「こども建築塾」はこれまで約4,600名が参加し、満足度95%を維持しています。「こども起業塾」は第15回キャリア教育アワード(大企業の部)優秀賞を受賞しており、参加者満足度は90%です。「食農みらい塾」の母体となる自然学舎も、これまで15,000人以上が参加し、第17回キッズデザイン賞を受賞するなど、多くの実績を積み重ねています。

「やってみる」が未来につながる第一歩

子どもたちが将来について考える機会は、学校の授業だけに限られるものではありません。実際に体験し、考え、人と協力しながら挑戦することで、自分でも気付いていなかった興味や得意なことに出会える場合があります。

今回の3日間のイベントでは、「食」「建築」「起業」という異なる分野を通して、子どもたちは仕事の内容を学ぶだけでなく、自分の言葉で伝える力や、相手の立場を考える視点、仲間と協力して一つのものをつくる大切さなど、多くの学びを得ました。それぞれの体験が、「将来どんな自分になりたいか」を考えるきっかけにもつながったようです。

社会が大きく変化する今、知識を身につけることに加え、実際に体験しながら考える学びの重要性はますます高まっています。夏休みという特別な時間を活用した今回の取り組みは、子どもたちが新しい可能性に出会い、自分らしい未来への一歩を踏み出す貴重な機会になったのではないでしょうか。