五感で味わうワインの魅力を広げる日本ブラインドテイスティング協会が誕生

ワインを味わうとき、どうしてもラベルや価格といった“情報”が気になってしまいます。ところが、その先入観をそっと脇に置き、見た目・香り・味わいだけで向き合うと、驚くほど新しい世界が広がっていきます。ふだん気づかない香りの変化や余韻の違いが鮮明に感じられ、まるで自分の感覚が研ぎ澄まされていくような体験になります。

こうした楽しさや可能性をより多くの人に届けたいという思いから、2025年10月に「日本ブラインドテイスティング協会」が設立されました。ワイン愛好家だけでなく、これから学び始める人や興味を持ったばかりの人でも参加しやすく、ブラインドテイスティングをひとつの文化として育てていくことを目指しています。

ラベルを隠して味わうというシンプルな行為の中には、知識だけでは語り尽くせない奥深さがあります。五感を使って味わいを言葉にする挑戦や、想像もしていなかった香りを発見する瞬間は、ワインに触れる時間をより豊かなものにしてくれます。協会の活動が広がることで、この魅力をより多くの人が体験できるようになると感じます。

ブラインドテイスティングとは?

ワインを楽しむとき、ラベルのデザインや価格、造り手の名前など、どうしても様々な情報が頭に浮かびます。そうした要素は魅力の一つでもありますが、一方で「本来どんな味だったのか」を純粋に判断するのが難しくなることもあります。ブラインドテイスティングは、あえてこれらの情報を隠し、ワインそのものと向き合うための方法です。

注目されている理由のひとつは、五感を総動員して味わいを確かめる点にあります。グラスを傾けたときの色合い、立ち上る香り、口に含んだ瞬間の質感や余韻——普段は意識していなかった細かな変化に気づくたび、ワインとの距離がぐっと近づいたような感覚を覚えます。

近年は競技として楽しむ人も増え、味わいや香りから品種や産地に迫る知識とひらめきの勝負が人気を集めています。動画配信でもブラインドテイスティング企画は大きな反響があり、専門家だけでなく一般の愛好家からも注目される存在になっています。

情報にとらわれず、ワインの個性そのものを体験する——。シンプルでありながら奥深いこの手法が、多くの人を惹きつけているのだと感じます。

ワイン文化を育てる新しい拠点

ブラインドテイスティングの魅力をより広く伝えるためには、正しい知識を学び、感性を磨くための場が欠かせません。今回設立された日本ブラインドテイスティング協会は、その役割を担う拠点として生まれました。ワインに詳しい人だけでなく、これから学び始める人まで幅広く参加できる環境づくりを大切にしています。

協会が目指しているのは、単なる技能習得ではなく、「ワインに向き合う楽しさ」を共有できる文化の形成です。味わいをどう捉えるか、感じたことをどのように言葉にしていくかというプロセスは、知識と感性が結びつく体験でもあります。こうした学びを積み重ねることで、一人ひとりのワインとの関わりがより豊かなものになっていくと感じます。

また、同じ興味を持つ参加者同士が交流できることも重要なポイントです。経験やレベルの違いにかかわらず、共通のテーマを楽しむ仲間とつながることで、挑戦したい気持ちや好奇心がさらに広がっていきます。協会の活動が、こうした前向きな学びのサイクルを生み出す場として機能していくことが期待されます。

学びを深める3つの取り組み

協会の活動の中心となるのが、講習会、コンテスト、そして資格制度の3つです。どれもブラインドテイスティングをより深く学び、楽しむための仕組みとして整えられています。

まず、講習会はオンラインと対面の両方で参加でき、全国どこからでも学べる環境が整っています。トップテイスターによる解説を受けながら、テイスティングの手順や表現方法を体系的に学べるのが特徴です。初めて挑戦する人でも理解しやすい内容になっており、ワインとの向き合い方を丁寧に身につけられる場になっています。

次に、毎月開催される大会では、自宅に届くワインを使って全国の参加者が腕を競い合います。ランキング形式で評価されるため、学びの成果を確かめたい人にとっては良い刺激になります。挑戦を重ねるほど新しい発見があり、継続するモチベーションにもつながる取り組みです。

そして、テイスティング能力を客観的に評価する資格制度も導入されます。学んだ知識や経験を形として残せるだけでなく、上位認定者には講師として活動できる道も開かれています。文化を支える人材を育てる仕組みとして大きな意味を持つ取り組みと言えます。

講習・大会・資格の3本柱によって、ブラインドテイスティングの魅力を幅広く体験できる環境が整っています。

専門性を支えるメンバーたち

協会の活動を支えているのは、テイスティングの実力だけでなく、学びへの情熱と探究心を持ち続ける4名のメンバーです。
それぞれが異なる経験や得意分野を持ちながらも、「ワインを本質で味わう文化を広げたい」という共通の思いで集まっています。ここでは、その中心となる4名をご紹介します。

鈴木 明人(すずき あきと)

日本ブラインドテイスティング協会 会長。
大会での優勝経験を持ち、ワインのテイスティング理論を分かりやすく伝える活動を続けています。著書の出版やオンライン配信など、幅広い媒体で学びの機会を提供してきた存在で、ブラインドテイスティング文化を広げる中心的な役割を担っています。理論と実践の両面に精通し、多くの愛好家にとって学びの道しるべとなる人物です。

大倉野 泰造(おおくらの たいぞう)

理事。
国内大会で複数の優勝経験を重ね、世界選手権にも出場した実績を持つテイスターです。競技の場で磨いてきた洞察力と表現力は、学びの場においても大きな刺激となります。これまでの経験を通じて得た知識を、次の世代へ届けるための役割も担っています。

田尻 智之(たじり ともゆき)

理事。
ワインの学習サイトを運営するなど、教育の分野でも活動してきた人物です。基礎から応用までを体系的に整理し、学びやすい形で提供することに力を注いでいます。知識の理解を深めたい人にとって、安心して頼れる存在と言えます。

大塚 美咲(おおつか みさき)

事務局長。
大会で優勝・準優勝の実績を持ち、確かな実力を備えたテイスターです。実務面での運営を支えながら、挑戦を続ける姿勢は多くの人の励みとなっています。協会の活動を円滑に進めるための重要な役割を担い、学びの場を支える存在です。

4名が持つ知識や経験が合わさることで、協会としての活動に大きな厚みが生まれています。
競技の場、学びの場、そして日々のワイン体験まで、幅広い層にとって“新しい気づき”につながる取り組みが今後さらに広がっていくことを期待させてくれる体制です。

ワインの“本質”と向き合う新しい文化へ

ブラインドテイスティングは、ただ銘柄を当てる技術ではなく、ワインそのものと向き合う姿勢を育てる体験だと感じます。情報や先入観をひとつ取り払うだけで、香りの奥行きや味の変化が鮮やかに立ち上がり、自分の感覚と対話するような時間が生まれます。

今回設立された日本ブラインドテイスティング協会は、そうした体験をより多くの人が味わえるよう、学びの場を整える取り組みを進めています。講習会や大会、資格制度など、挑戦の幅が広がる仕組みが整うことで、新しい楽しみ方を知るきっかけにもつながっていきます。

専門家だけでなく、これから学び始める人にとっても開かれた場になることで、ワイン文化がさらに豊かに広がっていくはずです。五感で味わいを捉え、自分の感性を磨く体験が、それぞれのワイン時間を少し特別なものにしてくれるはずです。

今後、協会の活動がどのように広がり、新しい文化を形づくっていくのか。これからの展開が楽しみです。


日本ブラインドテイスティング協会 概要

一般社団法人日本ブラインドテイスティング協会は、ブラインドテイスティングの普及およびテイスティング技術の向上を通じて、消費者への真に価値ある商品の提供、飲食産業の振興、そして国民の豊かな生活に寄与することを目的とした団体です。
全国大会の開催、講座・認定試験の提供、テイスター同士の交流機会の創出など、目的の実現に向けた幅広い事業を展開しています。

公式サイト:https://blind-tasting.or.jp/