生成AIの登場によって、文章の作成や情報の整理など、これまで時間がかかっていた仕事も効率よく進められるようになりました。しかし、便利になったはずなのに、なぜか以前とは違う疲れを感じる。そんな経験をしている人もいるのではないでしょうか。
AIが出した答えが本当に正しいのか確かめたり、いくつもの提案から最適なものを選んだり。作業の負担が減っても、人が考え、判断する場面はなくなりません。こうしたなか、お茶のブランド「辻利」を展開する片岡物産株式会社が、仕事で生成AIを利用する500人を対象に「AI活用と休憩の実態調査」を実施しました。その結果、半数以上がAI利用時に疲労や負担を感じていることが明らかになりました。
さらに調査では、AIによる疲れを感じる人ほど、仕事の合間にひと息つく時間を求め、抹茶を飲む割合も高いという興味深い傾向が見えてきました。便利さを追い求める時代だからこそ、少し立ち止まる時間にも大切な意味があるのかもしれません。今回は、調査から見えてきた「AI疲れ」の実態と、熊本大学の専門家が語る休憩の大切さについて紹介します。
便利になったはずの生成AI、半数以上が感じる「AI疲れ」の正体

では、実際に生成AIを仕事で使っている人たちは、どのように感じているのでしょうか。片岡物産株式会社が、週3日以上仕事で生成AIを利用している全国の20〜69歳の男女500人を対象に実施した調査では、84.6%が生成AIによって「業務が効率化された」と回答しました。一方で、56.0%がAIを利用する際に疲労や負担を感じていることも明らかになりました。

では、便利なはずのAIが、なぜ疲れにつながるのでしょうか。その理由として最も多かったのが「AIの回答が正しいかチェックする必要がある」で、43.2%にのぼりました。AIが短時間で文章や情報をまとめてくれても、その内容が正確かどうかを確かめるのは人間の役割です。
さらに、AIが示した複数の選択肢から何を採用するか、最終的に判断することも求められます。これまで自分で行っていた作業をAIに任せられるようになった一方で、確認や判断という別の負担が生まれていることがうかがえます。
仕事が早く進むことと、疲れずに働けることは、必ずしも同じではないようです。生成AIが身近な存在になるほど、私たちの働き方にも新たな課題が見えてきているのかもしれません。
AI時代だからこそ求められる「何も考えない時間」

AIを活用することで仕事の効率が上がる一方、知らず知らずのうちに疲れをため込んでいる人もいるようです。では、そんな人たちは日々の仕事のなかで、どのような時間を求めているのでしょうか。
今回の調査では、AI疲れを「よく感じる」と回答した人の97.6%が「手軽にほっとひと息つきたい」と考えていることがわかりました。さらに、84.5%が「ととのう感覚を得たい」と回答しており、忙しい毎日のなかで気持ちを落ち着かせ、自分のペースを取り戻したいという思いがうかがえます。

また、本来取りたい休憩として上位に挙がったのは、「仮眠」「軽いストレッチや運動」「何も考えない時間」でした。いずれも特別な準備を必要とせず、仕事から少し離れて心や体を休められるものです。次々と情報を処理し、判断を求められる環境だからこそ、あえて考えることから離れる時間が求められているのかもしれません。
AIによって生まれた時間を、さらに多くの仕事に使うだけでなく、自分自身を休ませるために使う。そんな働き方も、これからの時代には大切になっていきそうです。
仕事の合間の一服に注目、AI疲れと抹茶の意外な関係

忙しい仕事の合間に、温かい飲み物を口にしてほっとする。そんな何気ない時間が、気持ちを切り替えるきっかけになっているのかもしれません。今回の調査では、84.4%が「温かい飲み物を飲むとほっとする・落ち着く」と回答しており、飲み物を通じた気分転換が多くの人に親しまれていることがわかりました。

なかでも興味深いのが、AI疲れと抹茶の関係です。職場や学校で週1回以上抹茶を飲む人の割合は、AI疲れを感じる人で22.5%だったのに対し、感じない人では6.8%。その差は約3.3倍にもなりました。また、抹茶を飲む理由として最も多かったのは「ほっとしたい・気分転換したい」(31.0%)で、飲むタイミングは「午後の仕事・家事・勉強の合間」(34.2%)が最多となっています。
日本には古くから、お茶を飲んでひと息つく「一服」という文化があります。抹茶といえば茶道のような特別な場面を思い浮かべる人もいるかもしれませんが、今回の調査からは、日常のちょっとした休憩にも取り入れられている様子が見えてきます。
ただし、今回の調査は、抹茶を飲むことでAI疲れが解消されると証明したものではありません。それでも、慌ただしい日常のなかで飲み物を用意し、少しだけ仕事の手を止める。そんな小さな習慣が、自分のペースを取り戻すきっかけになるのかもしれません。
AI時代に必要なのは「考え続けない時間」熊本大学の専門家が語る休息の大切さ

生成AIが仕事を助けてくれるようになった今、人間に求められる役割も少しずつ変わりつつあります。こうした変化について、緑茶や抹茶の成分が脳や心の健康に与える影響を研究している、熊本大学大学院生命科学研究部の倉内祐樹准教授が見解を示しています。
倉内准教授は、AIによって作業が効率化されても、回答の正しさを確認し、最終的な判断を下すのは人間であると指摘しています。今回の調査で「AIの回答が正しいかチェックする必要がある」という声が最も多かったことについても、AI時代の疲れは単なる作業量ではなく、判断を繰り返すことから生じている可能性があると説明しています。
だからこそ大切なのが、意識的に作業から離れ、自分のペースを取り戻す「ととのう時間」です。倉内准教授によると、飲み物をいれてひと息つくことも、仕事から気持ちを切り替えるきっかけになります。また、抹茶に含まれるテアニンやカテキンといった成分については、脳の働きやストレス、認知機能との関係を調べる研究も進められているそうです。
AIによって答えを得るまでの時間が短くなった今、私たちには、あえて判断することから離れる時間も必要なのかもしれません。倉内准教授の言葉は、効率化だけでは測れない休息の大切さを改めて考えさせてくれます。
AIと上手に付き合うために、忙しい毎日に小さな休息を
生成AIの進化によって、私たちの仕事はこれまで以上に便利になりました。しかし、作業が効率化される一方で、新たな疲れが生まれていることも、今回の調査から見えてきました。便利な道具が増えたからといって、必ずしも心や体の負担まで軽くなるわけではないようです。
そんな時代だからこそ、仕事の手を止めて、ほっとひと息つく時間を大切にしたいものです。温かい飲み物を楽しんだり、軽く体を動かしたり、何も考えずに過ごしたり。自分に合った方法で気持ちを切り替えることが、忙しい毎日を心地よく過ごすための一歩になるのかもしれません。
AIを上手に使いこなすことと同じくらい、自分自身を上手に休ませることも大切です。次々と答えが生まれる時代だからこそ、ときには答えを探す手を止めて、自分のための「一服」を楽しんでみてはいかがでしょうか。









