企業から寄せられた支援が、若い研究者の学びを後押しし、その研究がいつか地域や社会の未来へつながっていく。そんな循環を生み出す新たな取り組みが、徳島で始まっています。
徳島大学は、石井町の事業を通じた企業版ふるさと納税による寄付をもとに、「徳島大学石井町企業版ふるさと納税奨学金」を新たに創設。2026年7月28日には、徳島大学石井キャンパスのバイオイノベーション研究所で、奨学金の授与式と交流会が開催されました。
そこに集まったのは、支援を受ける学生だけではありません。大学、石井町、そして支援企業も参加し、それぞれの立場から若い研究者へ期待を寄せました。さらに交流会では、学生が自身の研究について企業の参加者と語り合う機会も設けられています。 奨学金という支援を入り口に、大学・企業・地域がつながり、その先の研究や社会へと可能性を広げていく今回の取り組み。その背景と当日の様子を紹介します。
企業からの想いを若い研究者へ|新たに生まれた奨学金制度
今回の取り組みの出発点となったのは、石井町の「まち・ひと・しごと創生推進事業」を通じて企業から寄せられた支援です。徳島大学では、企業版ふるさと納税による寄付を原資として、「徳島大学石井町企業版ふるさと納税奨学金」を新たに創設しました。
企業版ふるさと納税と聞くと、少し難しい制度のように感じるかもしれません。今回の奨学金に目を向けると、その支援が向かう先にいるのは、徳島大学で学び、研究に取り組む学生たちです。企業から寄せられた支援を若い世代の学びや研究へとつなげていくことは、未来の研究人材を育てるという意味でも大きな意義を持っています。
そして、この奨学金を支えているのは大学だけではありません。企業からの寄付をもとに、石井町と徳島大学が連携して学生を支える仕組みとなっており、企業・大学・行政がそれぞれの立場から若い世代の成長を後押ししています。石井町長代理として出席した喜多利生教育長からも、今回の制度について「企業、大学、行政が一体となって地域を育む産学官連携の理想的な姿」との評価が寄せられました。
一つの寄付が学生の学びや研究を支え、やがてその成果が地域や社会へと広がっていく。今回誕生した奨学金には、目の前の学生を支援するだけではなく、その先の地域や社会へとつながっていく可能性も込められています。
「研究を社会へ還元したい」若い研究者へ託された期待

2026年7月28日に徳島大学石井キャンパスのバイオイノベーション研究所で行われた授与式には、奨学金の対象となる学部生・大学院生をはじめ、支援企業や自治体の関係者が出席しました。開会にあたり、バイオイノベーション研究所の三戸太郎所長は、地域の将来を担う若い世代への期待が込められた支援に対し、感謝の言葉を述べています。

石井町の喜多利生教育長からは、失敗を恐れず学問に取り組むことに加え、自分の学びを地域やさらに広い世界へどう生かし、還元していくのかという視点を持ってほしいと学生たちへエールが送られました。

支援企業である化研テクノ株式会社の宮内智夫取締役営業部部長、日新器械株式会社の七條敬科学機器事業部部長からも、「人」の大切さや、地域・社会とのつながりを意識しながら探究を続けることへの期待が伝えられています。
そして授与式では、奨学生を代表して大学院博士後期課程2年の藤江快さんに授与決定通知書が手渡されました。藤江さんが語ったのは、支援への感謝を忘れず、研究成果を社会へ還元できるよう努力していくという決意です。
企業や地域から受け取った支援を、自らの研究を通じて社会へ返していく。奨学金という形でつながったそれぞれの想いが、若い研究者のこれからへと託された授与式となりました。
研究室の外へ|学生と企業が語り合った交流会

授与式を終えた後には、奨学生と支援企業、自治体の関係者による交流会が開催されました。まず、今回の奨学金を支援する化研テクノ株式会社と日新器械株式会社が、それぞれの企業について紹介。その後は学生と企業参加者がグループに分かれ、自由に言葉を交わす時間が設けられました。
石井キャンパスで学生たちが取り組んでいる研究分野は、農業や昆虫生産、医療技術などさまざまです。交流会では、こうした最先端の研究に取り組む学生たちが自ら研究内容を語り、企業側からはビジネスや社会のニーズという視点でアドバイスが送られるなど、活発な意見交換が行われました。

大学で積み重ねている研究について、普段とは異なる立場の人に伝え、社会との接点を考える。学生にとって今回の交流は、普段とは異なる視点に触れる機会にもなったのではないでしょうか。実際に、学生のキャリア形成だけでなく、新たな産学連携の可能性を探る時間にもなったとされています。
奨学金による経済的な支援だけで終わらず、学生と企業が直接つながる機会まで生まれていることも、今回の取り組みの特徴です。若い研究者の探究と、企業が持つ社会やビジネスの視点。その二つが出会うことで、研究の可能性がさらに広がっていくことが期待されます。
石井キャンパスから地域の未来へ|研究人材を育て、新たな産業につなぐ
今回の奨学金制度や交流会の先に、徳島大学が見据えているのは、若い研究人材の育成と、その力を生かした新たな産業や地域の未来です。石井キャンパスでは、農業や昆虫生産、医療技術など幅広い分野で研究が進められており、学生たちがそれぞれのテーマと向き合っています。
徳島大学では今回の取り組みをきっかけに、石井キャンパスにおける研究人材の育成をさらに充実させ、生物系新産業の創出と地域活性化を目指しています。大学の中だけで研究を完結させるのではなく、企業や自治体ともつながりながら、その成果を社会へ生かしていく。今回の奨学金制度と交流会は、そんな未来へ向けた一つの接点ともいえそうです。
また、「徳島大学石井町企業版ふるさと納税奨学金」は、企業から寄せられる寄付によって若い研究者を支える仕組みです。徳島大学基金のプロジェクトページでは、この奨学金制度について紹介されています。今回の取り組みに関心を持った方は、制度の背景とあわせてチェックしてみてはいかがでしょうか。
学生の研究を支える企業、その想いをつなぐ大学と石井町、そして支援を力に研究へ向き合う学生たち。今回生まれたつながりが、新たな研究や産学連携へどのように発展していくのか。石井キャンパスから広がるこれからの可能性にも注目です。
徳島大学石井町企業版ふるさと納税奨学金
URL:https://giving.honbu.tokushima-u.ac.jp/project/100968.html
支援から始まるつながりを、地域と社会の未来へ
企業からの支援を若い研究者へ届けるだけではなく、大学や自治体、企業がつながり、学生が自身の研究を社会へと広げていくきっかけをつくる。今回の奨学金制度と交流会からは、人を育てることを起点に、地域の未来をつくっていこうとする姿が見えてきます。
研究の成果は、すぐに目に見えるものばかりではありません。それでも、学生たちが学びや研究を積み重ね、企業や地域との接点を持つことで、新しい可能性が生まれていきます。企業から託された支援が若い研究者の力となり、いつかその研究が社会へ還元されていく。そんな循環が広がっていけば、今回の取り組みはさらに大きな意味を持つことになりそうです。
石井キャンパスを舞台に始まった新たな奨学金制度。ここから育った研究や人材が、これからどのように地域や社会とつながっていくのでしょうか。学生一人ひとりの挑戦とともに、徳島大学、企業、石井町がつくる産学官連携のこれからにも注目していきたいですね。
国立大学法人徳島大学 概要
徳島大学は、1949年に創立された国立大学です。総合科学部、医学部、歯学部、薬学部、理工学部、生物資源産業学部の6学部を擁し、教育・研究を幅広く展開しています。
「真理の探究と知の創造」を理念に掲げ、未来を切り拓く人材の育成やイノベーションの創出、地域をはじめとする社会との共創を通じて、豊かで健全な未来社会の実現を目指しています。









