2025年は「昭和100年」という節目の年であり、さらにエジプトでは新たな王墓が発見されるなど、古代文明への注目が高まっています。そんな背景の中、池袋のサンシャインシティにある古代オリエント博物館で、特別展「やっぱりエジプトが好き♡ 昭和のニッポンと古代のエジプト」が9月27日から11月24日まで開催されます。
日本における古代エジプト人気といえば、1965年に大きな話題を呼んだツタンカーメン展を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。しかし実はそれ以前から、エジプトをモチーフにした模様やデザインが、布や紙、陶磁器など身近な日用品に取り入れられていたことはあまり知られていません。今回の展示では、そうした昭和30~40年代を中心に広がった「エジプト柄ブーム」に焦点が当てられ、当時の生活を彩った数々の品々が紹介されます。
スカートや着物、ノートや包装紙、さらには家具や灰皿といった暮らしの道具にまで、古代エジプトの神秘的なデザインが息づいていました。約200点にも及ぶコレクションを通じて、人々がどのように異国の文化を楽しみ、憧れを生活に取り入れていたのかを知ることができます。現代の私たちが「昭和レトロ」と聞いて想像する世界に、エジプトの要素が溶け込んでいたという意外性も見どころのひとつです。
昭和に広がった“エジプト柄ブーム”
今回の特別展では、昭和30年代から40年代を中心に日本で広がった「エジプト柄ブーム」にスポットが当てられています。展示品は北名古屋市歴史民俗資料館の所蔵品を含む約200点に及び、古代エジプトのモチーフがいかに日常の中に浸透していたかを感じられる内容になっています。

布地の分野では、神聖な動物や太陽をあしらった柄がプリントされ、スカートやワンピース、着物や半纏、さらには蚊帳やハンカチなど多様なアイテムに使われていました。紙製品では、エジプトの建築物や人物像をあしらったノートの表紙や包装紙が登場し、学生や一般の人々が日常的に目にしていたことがうかがえます。

また、陶磁器やガラス製品にはマグカップやティーセットなどが並び、家具や小物にもエジプト柄が取り入れられていました。衣装ケースや宝石箱、さらには栓抜きや灰皿といった生活用品にまで及んでいたのは驚きです。日本人の暮らしに古代文明の意匠が自然に溶け込んでいたことを、展示を通じて知ることができます。
漫画や音楽にも登場したエジプトの魅力

エジプト柄ブームは日用品だけでなく、サブカルチャーの世界にも大きな影響を与えていました。展示では、昭和時代の漫画やテレビ番組、音楽ジャケットなど、幅広い分野に広がったエジプトモチーフを見ることができます。
たとえば、人気漫画『王家の紋章』では、古代エジプトの王メンフィスと現代の少女キャロルの物語が描かれ、世代を超えて愛されてきました。また「ジャイアントロボ」や「勇者ライディーン」には、王がかぶるネメス頭巾がデザインとして登場し、子どもたちの目を引きました。さらに、北アイルランドのロックバンド・ロゼッタストーンが発表したレコードジャケットにはヒエログリフが用いられ、日本でも販売されるなど、音楽シーンにも影響が及んでいます。
こうした事例からは、古代文明が決して堅苦しいものではなく、昭和の文化や娯楽の中で身近に親しまれていたことがよくわかります。
大人も子どもも楽しめる関連イベント
特別展の会期中には、展示を見るだけでなく学びや体験を深められる多彩なイベントも用意されています。

注目は「昭和と古代エジプトをつなぐモノ語り」と題した講演会です。学芸員の解説を通して、エジプト柄コレクションの成り立ちや魅力に迫る内容で、大人がじっくりと歴史を学べる機会になっています。

一方で子ども向けには、古代エジプトの模様を調べて自分だけの柄を考えるワークショップや、神官のお仕事を体験できるプログラムも開催されます。衣装を身に着けて道具を使いながら学ぶスタイルは、歴史を「知る」だけでなく「体感する」楽しさがあります。
世代を問わず楽しめる内容が揃っているので、家族連れや友人同士で訪れても、それぞれの楽しみ方ができるのが魅力です。
昭和と古代エジプトが出会う特別な時間へ
「やっぱりエジプトが好き♡ 昭和のニッポンと古代のエジプト」は、昭和の暮らしと古代文明が思いがけない形で交差した時代を振り返らせてくれる展示です。懐かしさの中に新しい発見があり、大人にとっては昭和の記憶を呼び起こすきっかけに、若い世代にとっては意外性ある文化体験になるでしょう。
昭和100年という節目の年に開催されるこの特別展は、世代を超えて楽しめる時間を提供してくれそうです。秋のひとときに、エジプトと日本が織りなす独特の世界観を味わってみてはいかがでしょうか。
開催概要

特別展「やっぱりエジプトが好き♡ 昭和のニッポンと古代のエジプト」は、池袋サンシャインシティ内の古代オリエント博物館で開催されます。アクセスしやすい立地に加え、夜間開館日も設定されているので、休日だけでなく学校や仕事帰りにも立ち寄れるのが魅力です。
日時:9月27日(土)~11月24日(月・振) 10:00~17:00(最終入館16:30)
※10月2日(木)、11月21日(金)は20:00まで開館(最終入館19:30)
入館料:一般1,000円 大・高生800円 中・小生600円
※団体割引・障害者割引あり
後援:豊島区、豊島区教育委員会
特別協力:サンシャインシティ
協力:北名古屋市歴史民俗資料館(昭和日常博物館)
URL::https://aom-tokyo.com/exhibition/250927_egyptian_motif.html