秋の大型連休「シルバーウィーク」を前に、今年の旅行トレンドが見えてきました。コロナ禍で落ち込んだ旅行需要は回復を続け、2019年の水準に近づきつつあります。その中心にいるのは20代や30代といった若い世代で、休暇を積極的に活用して旅に出る姿が見えてきています。
海外では、韓国や台湾など近場のアジアを選ぶ人が多い一方、ハワイのように有給を組み合わせて長く滞在する人もいて、旅行スタイルの二極化が鮮明になっています。また、予約を直前に行う傾向も強まり、「思い立ったらすぐ旅へ」という動きが広がっているのも特徴です。
国内では、大阪や沖縄など定番の都市やリゾートに加え、長野や箱根といった自然豊かなエリアが人気を集めています。さらに秋ならではの「ぶどう狩り」「梨狩り」といった季節の体験も注目され、シルバーウィークならではの楽しみ方が広がっています。
コロナ後の旅行需要回復

ここ数年で大きく変化してきた旅行の傾向ですが、2025年のシルバーウィークは回復基調がよりはっきりと見えてきました。データによると、今年の旅行予定は2019年と比べて84%まで回復しました。2020年は52%、2021年は39%と落ち込みが大きかったことを考えると、ここ数年で着実に回復していることがわかります。
完全にコロナ前の水準には届いていないものの、2019年当時と比べて8割以上にまで回復したことは大きな意味を持ちます。特に2022年以降は右肩上がりの傾向が続いており、旅行が再び「特別な行事」から「日常の延長」に戻りつつある様子がうかがえます。
この数字からは、旅行が改めて生活の一部として定着していることが見て取れます。今年のシルバーウィークも、連休を利用して家族や友人と過ごす時間を楽しもうとする人が増えており、「どこに行くか」「どんな過ごし方をするか」を工夫する動きが広がっているようです。
若者がシルバーウィーク旅行をリード

今年のシルバーウィーク旅行をけん引しているのは、20代や30代の若い世代です。データによると、20代の旅行予定登録が最も多く、次いで30代が続いています。一方で40代以降は数値が下がり、世代間で旅行に対する温度差が見えてきました。
背景には、ライフスタイルや環境の違いがあると考えられます。学生や社会人になりたての20代は、比較的自由に時間を調整しやすく、友人や恋人との旅行を積極的に計画する傾向があります。30代も同様に旅行意欲が強いものの、家庭や仕事の都合が増える40代以降になると、休暇の過ごし方が「旅行」以外へと分散していくのかもしれません。
この結果からは、シルバーウィークを利用した旅行需要を押し上げているのが若者層であることがはっきりと示されています。今後の旅行市場においても、若年層の動向が大きなカギを握りそうです。
海外旅行は“安近短”と“ゆったり遠出”の二極化

海外旅行の行き先では、はっきりと二つの傾向が浮かび上がっています。ひとつは、韓国や台湾、フィリピン、ベトナムなどの近場のアジアを選ぶ“安近短”のスタイルです。短期間で低予算、平均2.5泊・2名といったコンパクトな旅が目立ち、飛び石連休を有効に使う形が人気を集めています。特にフィリピンやベトナムは前年より順位を大きく上げ、物価の安さや直行便の利便性が支持されています。
もうひとつは、ハワイのように有給を組み合わせて長期の旅行を楽しむ“ゆったり遠出”のスタイルです。近場で効率的に楽しむ人と、思い切って時間を伸ばして遠くへ行く人。休暇の取り方次第で旅行の形が大きく変わっており、二極化がより鮮明になっていることが分かりました。

また予約のタイミングにも特徴があり、全体の3割が8月に集中しました。直前に「やっぱり行こう」と決めて予約する人が増えており、海外旅行がより身近になっている様子もうかがえます。
国内旅行は都市と自然、そして秋の味覚へ

国内旅行の人気は、定番の都市やリゾート地に集中しています。大阪や沖縄、北海道、東京といった観光地は安定して上位を占めており、幅広い層から支持を集めています。特に大阪は大阪万博を開催中で、そのイベント参加を目的とした旅行が注目されています。
一方で、連休後半になると長野・那須・箱根といった自然豊かなエリアが目立ち始めます。都市からアクセスしやすく、週末を使って気軽に出かけられる点が人気の理由です。都市部で楽しむ旅と、自然で癒やされる旅の両方が組み合わさり、国内旅行にも多様なスタイルが広がっています。

さらに、この時期ならではの楽しみとして「果物狩り」が挙げられます。ぶどう狩りや梨狩り、シャインマスカット狩りといった秋の味覚が予定に数多く登録されており、食欲の秋を象徴する体験型レジャーが人気を集めています。家族連れや友人同士で気軽に楽しめる点も、シルバーウィークらしい過ごし方といえるでしょう。
近場か遠出か、自分らしい休暇の選び方を
今年のシルバーウィークは、旅行需要の回復が一段と鮮明になりそうです。若い世代を中心に活発な動きが見られる一方で、休暇の取り方や目的によって「近場で手軽に楽しむ派」と「時間を確保して遠くへ行く派」に分かれているのが特徴です。
海外ではアジアを中心とした“安近短”が人気を集めつつ、ハワイのような遠距離を選ぶ層も存在します。国内では都市部や自然に加え、秋ならではのフルーツ狩りも予定に組み込まれており、多様な過ごし方が広がっています。
休暇の過ごし方に正解はありません。短期間でも気軽にリフレッシュできる旅もあれば、思い切って時間を使い、新しい体験を得る旅もあります。今年のシルバーウィークは、自分に合ったスタイルで特別な時間を過ごすことができそうです。
<調査概要>
調査主体:TimeTree未来総合研究所、旅行アプリ「NEWT(ニュート)」
対象データ:
・2019年1月1日~2025年9月4日の期間に「TimeTree」に登録された予定データ
・旅行アプリ「NEWT」における2025年9月12日〜9月23日出国分の予約データ
分析方法:匿名性を確保したうえで統計的に処理
出典元:「TimeTree未来総合研究所」と旅行アプリ『NEWT(ニュート)』の「2025年シルバーウィーク旅行」共同調査(プレスリリースリンク)