ポケカブームの真相を直撃取材 投資と趣味の狭間で揺れるカード市場とは

今年の夏、マクドナルドの「ハッピーセット」にポケモンカード(以下、ポケカ)が登場しました。

セットを購入するとカードが付いてくるという子ども向けのキャンペーンとして始まったものですが、これが大きな話題を呼びました。

人気キャラの存在や高値取引への期待、そしてハッピーセットという購入のしやすさも重なり、普段はトレカに縁のなかった主婦やサラリーマン、さらには外国人観光客までを巻き込む「マックポケカ騒動」へと発展。社会現象と呼べるほどの広がりを見せたのです。

果たしてトレカ市場はこのまま拡大を続け、新たに投資やコレクション対象としての価値をさらに高めていくのでしょうか。

そしてそんな騒動の中、トレカ専門店ではどんな動きがあったのか――。現場を知る店長に話をうかがいました。

『売れると聞いて……』マックポケカ騒動で見えた“異常な客層”

騒動の発端となったポケモンカード

今年8月にマクドナルドが実施したハッピーセット「ポケモンカード(以下、ポケカ)」キャンペーンでは、人気キャラ「ピカチュウ」カードが入ったセットが3日間数量限定で販売されました。

ところが一部の利用客による大量購入により、本来なら子どものためのものが入手困難に。さらにはフードロスをもまねく大騒動へと発展したのです。

トレカ専門店「シンソク 新宿店」店長 伊藤 優さん

「今回の配布では、2枚セットの中に必ずピカチュウが入っている、というのも大きな騒ぎになった原因だと思います」

こう話すのは、トレーディングカード(以下、トレカ)専門店「シンソク」店長の伊藤さん。秋葉原に2店舗を構える同店は、8月8日に新宿に新店舗をオープンしたばかり。まさに「ポケカ騒動」の真っただ中でのオープンでした。伊藤さんはその時のことをこう振り返ります。

「『高く売れると聞いて……』とポケカを持ってくる主婦や昼休み中のサラリーマンなど、普段はトレカ専門店に足を運ばない層が急増しました。ハッピーセットという購入のハードルの低さが、これまでトレカに縁のなかった人々を店舗に引き寄せたのでしょう。また、1人5セットまでの購入制限がある中で、グループで30セット分を持ち込む海外観光客もいましたね」

高騰するカードと価値の決まり方

とはいえ、先の主婦やサラリーマンなどの新規参入者にとって、トレカ相場は未知の世界。何が高く売れるのかは見当もつきません。そこで伊藤さんに、現在高額取引されているトレカを聞きました。

品質や相場を入念にチェックし買取額を確定

「ポケカの一強です。また、来年はポケモン30周年。今までも20周年や25周年など節目の年には数量限定カードが販売されました。さらに、Nintendo Switch2でポケモンの新作が出るタイミングでは? とも予想されています。さまざまな要素が重なるので、コレクターたちは目をギラつかせていると思いますよ」(伊藤さん)

店内に並ぶカードの中には、ピカチュウ以外のキャラのポケカが高値で販売されているのが見受けられました。

「高額ポケカは、リザードンやリーリエなどの人気キャラに集中しています。また、レアなキャラや数量限定のカードは、その希少性の高さから高値がつくことが多いです」

高額で取引されるポケカ

では、その価値を裏付ける指標となるものとは何なのでしょうか。伊藤さんはこう続けます。

「“PSA”というカード鑑定によって価値が明確化します。希少性はもちろん、キズやシミなど細かくチェックされ、最高評価は『PSA 10』。これがついたトレカは、希少価値が大幅にアップするのです。

ただ、PSA鑑定にはトレカの種類に見合った鑑定料が必要。海外にある鑑定事業者に依頼するので時間もかかります。鑑定結果によっては、依頼料の方が上回ることも」

初心者はどう楽しめばいい?

今回の騒動をきっかけとして今後トレカコレクター急増が予測される中、伊藤さんは初心者が陥りがちなトラブルについて教えてくれました。

「メルカリなどでのネット取引はトラブルも多いと聞きます。写真では良好な状態でも、届いた時にカードの裏を見たらキズやシミがついていた、なんていうことも。相場よりも明らかに安いものには注意が必要です。回避するためには、出品者に裏側の写真も送ってもらい、チェックすること。また、相場の動向チェックなどの情報収集は基本です。どのタイミングで買うか、売るかを見極めることは重要。コレクターたちはそこを意識して取引していますね」

「トレカ収集はスターターセットから始めると導入しやすいです」(伊藤さん)

お話をうかがっていると、トレカ収集には株取引に似た側面もあると感じられます。伊藤さんは、最近のコレクター層についてこう説明します。

「近年は、スニーカーや時計などからトレカにシフトするコレクターも増えている傾向にあります。理由のひとつは、場所を取らないこと。トレカなら棚ひとつで収納できますし。もうひとつは、株取引よりも元手がかからない。万が一損切りしても、痛手も少ないですからね」

専門店から見たトレカ文化

伊藤さんが店長をつとめるトレカ専門店「シンソク」は、新宿西口の家電量販店エリアに店舗をかまえます。取材中にも、同店にはサラリーマン風の男性客や海外観光客、そして若い女性客など、さまざまな人が訪れていました。

女性客や海外客などの客層が増加

「ポケカ騒動で女性ひとり客や主婦層が増えて、その時は少し異様な光景でした(笑)。また、夏休み期間でお子さん連れのお母さんや、外国人観光客の姿も。この現象が一過性で終わらず、今後リピーターにつながることを期待したいですね」

ポケモン世代として、カードゲームで夢中になった子ども時代から、コレクターやバイヤーとしてのさまざまな知識と経験を積み重ねている伊藤さん。これからトレカ収集を始めたい人たちにとっては、頼もしい存在といえるでしょう。

「トレカの天敵は“火”と“湿気”」(伊藤さん)

「今後は池袋にも店舗を拡大する予定。フレンドリーな接客がモットーです。気軽にお声がけください。EC販売やSNSでの告知も積極的に活用していますので、情報収集にお役立ていただけると嬉しいです」

コレクションとしてはもちろん、本来のカードゲームとしての要素もあるトレカ収集ブームは、これからも加速していきそうな気配を感じます。


取材協力店舗

店名:トレカ専門店 シンソク
住所:東京都新宿区西新宿1-18-16野村ビル9F
URL:https://www.cardshop-shinsoku.jp/

今回お話をうかがったのは、トレカ専門店「シンソク」。
秋葉原に2店舗を構え、2024年8月には新宿にも新店舗をオープンしました。豊富なラインナップと丁寧な対応で、初心者からコレクターまで幅広い層が訪れる人気店です。
カードの世界にこれから触れてみたい人も、すでに夢中になっている人も、訪れればきっと新しい発見があるはずです。

<取材・撮影・文/櫻井れき>