美樹本晴彦画集『MACROSS』展 〜合唱〜を記念したトークイベントが開催されました

9月6日(土)・7日(日)、大阪・kino cinéma 心斎橋にて、美樹本晴彦氏が登壇するトークイベントが開催されました。本イベントは、美樹本晴彦画集『MACROSS』展 〜合唱〜(8月13日〜9月9日/大阪・なんばマルイ開催)の一環として行われたものです。

展覧会では、東京、横浜、大阪それぞれ10点ずつメタルキャンバスアート(金属ならではの美しさ、表面の凹凸が特徴のGAAAT独自の技法)が制作されました。イベントでは、美樹本氏が画集への思いを語ったり、作品を回顧し、観客からの質問に応えたりしました。

8年越しの画集への思い

展覧会と画集について

2025年3月31日に画集『MACROSS』が発売されました。会場では購入した人も多く、美樹本氏は「たくさん購入頂いていますが、直接は話を聞いていないので手応えはあまり感じられていませんね」と感想を述べました。

今回の画集については、「集まった原稿を全て使っていいと言ってもらえたおかげでページ数を気にせず作ることができました。ですが、画集の中の作品で紛失しているものもあり、複製するデータや僕の手元にあるデータ、原画からスキャンするものを五月雨式に編集さんが集めて整理してくれてなんとか形になりました。最後の方は僕自身も『あれこれどこのだっけ』と混乱する感じでした」と回顧。

画集について話す美樹本氏

画集の中で見て欲しいポイントはどこか聞かれると、「買ってもらいたい気持ちはありますけど、見てほしくはないかもしれませんね。やっぱり照れくさいですし。どれくらいの方が気付いてくれたか分かりませんが、細かな修正は行っています。絵柄を変えるようなことはしていませんが」と話しました。

画集作品について

画集に掲載されている『愛は流れる』

「『愛は流れる』は、お手伝いの人に手伝ってもらい進めていましたが、アニメーション塗りの影なしのカラーマスクを作ってもらって、仕上げていく段階で、『バルキリーの羽を伸ばした方がかっこいいと思って伸ばしておきました』と言われて、わざと隠してあるのだけどなと思ったのが印象的です」と言及。

美樹本晴彦画集『MACROSS』展 〜合唱〜での展示の様子
展示会場ではラフを見ることができる。
画集に掲載されている『キュート!』

『キュート!』については、「相当煮詰まっていたときでしょうね。何を描いていいかわからなくて、時間もなかったのだと思います。当時、芸能雑誌を毎月のように資料として買い込んでいたので、それを参考にしたのだと思います」と明かしました。

画集に掲載されている『未沙・ティータイム』

『未沙・ティータイム』は、最初は長方形で作っていましたが、正方形に変更になり、細部までこだわりが感じられる作品。「油性のマーカーで色を塗っているのですが、クロッキー帳に描いたので、よく見ると紙の筋が入ってしまっています。それは消しました」と振り返りました。

画集に掲載されている『看板娘!』

『看板娘!』は横浜限定の作品で、現物を見ることはできませんが、「背景がコミック版の扉の絵だと思います。当時後ろの柄は入っていなかったのですが、似た柄を改めて作ってはめて、結果的に綺麗な仕上がりになったと思います」と展開しました。

画集に掲載されている『Flash Back2012』

大阪限定の『Flash Back2012』に関しては、「セルは見つからなかったが、原画が見つかったので線をスキャンして改めてCGでアニメーションに仕上げ直しました。元の絵は割と古いのですが、仕上げは画集用にしています。急遽使おうということになり、背景もこのために製作しました。金属質を出しながら、綺麗な配色になったのではと思います」と説明。

美樹本氏はファンの方との交流時間を多く取りたいと話し、会後半では「どんな質問でもいいですよ」と様々な質問に回答しました。

マクロスに関する質疑応答

観客からの質問に応える美樹本氏

天使の絵の具のFlash Backのミンメイの衣装が好きな方からは、衣装のデザインについて質問。「天使の絵の具の衣装は、未来調、SF調のテイストを入れたいなと思っていました。他の衣装とは違うアプローチでしたね」と口にしました。

マクロスシリーズの中で思い入れのあるキャラクターを聞かれると、「好きなキャラクターは『特にいません』と答えるのですが、描いている数はミンメイが1番多く、自分がスケッチに描いていたものを採用してもらったキャラクターなので思い入れがありますね」と回答。

作品やキャラクターができあがる時に共通して感じることはあるかと問われると、「ミンメイと未沙の関係性でいうと、視聴者を騙してやろうという話はよくしていました。当ててやろうとは思ってなく、誰もやったことがないからやりたいという思いの方が強かったです」と語りました。

マクロスシリーズを通してどんな変化があったかという質問に対しては、「最初は思いついたものを描けばよかったのですが、IIはスタッフが違ったので別物にしたいという気持ちがありました。良いキャラクターになったかは別にして、尖っていた時期なので今見返すといろいろ実験的なことをやっていたなと思います。今と違ってスマホで何でも調べられる時代ではなかったので、よく分からないまま描いていた部分はありました。たくさんの方に助けていただいてやって来れた感じですかね」と明かしました。

画風の変化やCGの使用について

40年間描き続けて変わったこと、変わらなかったこと

「アナログからデジタルに変わって、昔から変わらない部分や心掛けている部分があるのか教えてください」と問われ、「40年間やっていて、心境の変化はあまりありません。技術的な未熟さがあり、思うようには描けないわけですが、手書きの温もりを残しつつCGを使いたいと思っています。ツールの使い方はよく分かっていないので、道具の代わりに使っている感覚です。どれだけ手描きっぽくできるかを意識しています」とコメントしました。続けて、目の描き方については、「目もCGっぽくならないようにしていて、目だけ手書きのものをペーストして調整することもあります」と回答しました。


【美樹本晴彦画集『MACROSS』展 〜合唱〜 概要】

期間:2025年8月13日(水)〜9月9日(火)
※本イベントはすでに終了しています

美樹本晴彦画集「MACROSS」
発売日:2025年03月31日
定価:8,800円 (本体8,000円+税)
URL: https://www.kadokawa.co.jp/product/322409000660/